1997年7号

丸紅と地球環境問題

1.総合商社と地球環境問題
(1) 総合商社にとっての地球環境問題とは?

 私ども商社が地球環境問題を如実に知らされたのは、1989年に熱帯林伐採の問題について環境保護団体から厳しい批判を受けた時である。当時「TIME」の新年号の表紙に「病める地球」が登場し、「環境が大切だ」という印象を持った記憶がある。商社は途上国での事業が多い。途上国の環境基準は、巷間言われているほど緩いものではないし、先ずその基準を守って事業展開をすることが責務である。

(2) 地球環境問題に関するガイドライン

 当社では、91年8月に地球環境問題に関するガイドラインを制定した。基本理念は「良き企業市民としての責任を自覚し、人間社会の繁栄との調和を図りながら、健全な地球環境の保全へ向けて最善を尽くす。」であり、基本方針は、環境関連の法規制遵守と持続可能な開発への取り組みである。

2.地球環境問題への取り組み
(1) 環境意識の啓蒙活動

 社員への啓蒙活動として、熱帯林保護研究施設(ツリータワー・ウォークウエイシステム)への拠出、地球環境問題についてのパンフレット(アースコンシャス)の配布、経団連自然保護基金・WWF・日本野鳥の会等への加入、オフィス周辺のクリーンアップ運動、ゴミの分別 収集、再生紙利用、省エネ・省資源活動、グリーン購入ネットワークへの加入等が挙げられる。

(2) 業務遂行上の環境関連の留意事項

 商社活動は多岐にわたるので、環境面に留意しなければならないことも多い。そのため当社では、地球環境委員会を設置し、副社長が環境担当役員となっている。そして案件ごとに環境面 のチェックを行っており、必要に応じ地球環境・特定貿易管理部部長の意見を申し述べている。また1年に1回、業務を公害、自然環境、社会環境、国際条約、住民・少数民族、行政指導等、多岐にわたる環境影響チェック項目を通 じて、部単位で自己点検によりチェックしている。

 環境ビジネスについては、タイヤを粉砕し、これを再度原料ゴムとして使用する案件およびペットボトルの再生事業等に取り組んでいる。

3.商社にとっての環境側面
 現段階での我々の最大の課題は、ISO14000を満たす環境マネージメントシステムの構築である。商社にとってISO14000とは、また商社の環境側面 とは何だろうか。あらためて言うまでもないが、商社の環境側面は間接的な環境側面 と言えよう。商社においてビジネスを行う場合、投資実施から物流への関与等々まであらゆる局面 において、環境側面が発生する。当社には8部門があるが、部門によりまた商品によって環境側面 の重要度は、変わってくる。これが商社の悩みである。事業範囲が極めて広く、環境側面 が部門により異なるため、それをISO14000にどう落とし込むか、という議論を現在各社とも重ねている状況である。環境に関わるコストパフォーマンスをどうするかという問題もあるが、ISO14000は「出来ることからやりなさい、そして少しづつ改善しなさい」というコンセプトであるので、商社にとってもなじみ易い。今後もISO14000の早期取得を目指して努力していく所存である。

(本稿は6月2日の第29回地球環境問題懇談会で行われた、丸紅株式会社 小柳津浩之地球環境・特定貿易管理部部長の講演を事務局でまとめたものです。)

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