1997年8号

平成9年度第1回通常理事会の開催結果

 平成9年6月17日(火)、本年度第1回通 常理事会を開催したので、その概要を次のとおり報告する。

1 議案及び審議結果について

1 平成8年度事業報告書(案)及び決算報告書(案)について
  原案どおり承認議決した。

2 平成9年度日本小型自動車振興会補助金交付決定通 知の受諾及び同補助事業の実施(案)について
  原案どおり承認議決した。

3 理事の選任(案)について
  三鬼彰理事(新日本製鉄?相談役)の辞任に伴い、その後任として吉井毅氏(新日本製鉄?副社長)を理事に選任した。

4 顧問の推薦(案)について
  近藤次郎顧問、向坊隆顧問の任期満了(平成9年6月30)に伴い、両顧問の再任を推薦する決議をした。

2 平成8年度に実施した事業の概要は次のとおり。

 

第1 概 況

 平成8年度は、前年度からの継続調査研究5件、新規2件及び繰越1件の計8件の調査研究を行った。また、国・特殊法人等から調査研究事業を受託し、積極的な事業展開を図った。一方、我が国経済は緩やかな回復過程にあるとはいえ、低金利水準が続いており、事業運営のための財務面 では依然厳しい状況にある。

 

第2 事業の実施状況

I. 調査研究等事業

1.研究委員会による調査研究

(1) 2050年のサステイナビリティ研究委員会(継続)
(委員長:茅 陽一 慶應義塾大学教授)

 本委員会では、平成7年度に引き続き「持続可能な発展」を達成するための方策について調査研究を行った。具体的には、人口・資源・エネルギー・農業・経済・開発等の各分野の専門家からなるワーキンググループ(WG-1)において「持続可能な発展のための物理的な制約条件」及び「持続可能な発展を達成するためのシナリオ」について、計11回の委員会を開催し、討議した。

(2) 21世紀のインドと国際社会研究委員会(継続)
(委員長:飯島 健 さくら総合研究所環太平洋センター所長)

 日本を取り巻くアジアの国際社会を考えた場合、インドは発展途上の大国として、中国とともに、その潜在的な影響力はさまざまの面 で際立っている。国際社会にあって、インドが今後どのような方向性にあり、これと日本との関係をどう考えていくかについて研究した。

(3) 企業のグローバル化と国家・社会の在り方を考える研究委員会
(委員長:佃 近雄 国際貿易投資研究所 理事長)

 平成9年6月に報告書を作成する予定。本報告書では委員会で行われた延べ20回に及ぶプレゼンテーションを、「 グローバリゼーションのあるべき姿と国家の役割」等の4章 に編集し、様々な社会的、文化的インパクトをもたらす多国籍企業の活動、産業のグローバル化の望ましい姿、円滑なアプローチプロセスを提案する。

(4) GIIの行方と各国の対応研究委員会
(委員長:公文俊平 国際大学教授)

 高度情報化に関する世界各地域の動向を、GII(Global Information Infrastructure)へ進む道のりとして調査・検討を行ない、GII及び世界の情報革命と政治・経済・情報・社会の4つの新世界秩序軸、新しい開発主義の関係を整理し、その可能性について検討をし、そのとりまとめを行った。報告書は、平成9年6月に作成する予定。

(5) アジア地域における環境技術移転研究委員会
(委員長:森嶌昭夫 上智大学教授)

 急激な経済成長を遂げつつある東アジア地域において、これに伴って増大する環境負荷の問題が大きな懸念事項である。解決策の一つとして環境技術の移転が重要であり、委員会では環境技術移転の現状と問題点を情報、資金、制度に分類し、環境技術移転促進の方策について議論を行った。また、委員による中国、タイ、インドの環境技術移転実態調査を行った。

(6) 総合安全保障研究委員会

 アジア・太平洋地域では、急速な経済成長が続いている。他方、大規模な原子力利用計画や石油資源への依存増大といったエネルギー問題、酸性雨や海洋汚染といったトランスボーダーな環境問題が生じている。また、冷戦の終結にともなって、核兵器や化学兵器解体といった新しい課題が生じている。このような従来の安全保障の範疇を越えたグローバル・イシューズに対しては、課題毎に、関係国が柔軟に連繋を作りながら、国家、二国間取り決め、地域取り決め、セカンド・トラック、国際機構といった多面 的なメカニズムを利用して取り組むのが有効であるとの仮説に立って、国家、地域、国際機構などさまざまな主体のガバナンス(=政治的コントロールの能力)の現状と課題について研究する。
主要委員は委員長:今井隆吉元大使/主査:薬師寺泰蔵慶應大学教授、山内康英国際大学助教授

(7) 市場経済のグローバル化のための新要素を考える研究委員会(新規)
(委員長:東京大学経済学部教授 奥野正寛)

 本委員会では、冷戦後にグローバル化の進展した市場経済に焦点を当て、市場をさまざまな制度の集まりととらえ、実態を総合的に把握し、多様な制度の役割を明らかにするとともに、市場システムが今後どのように変化していくか検討することにより、日本経済の進むべき方向及び国際システムの在り方を展望する。なお、報告書の取りまとめは、平成9年末の予定。

(8) 21世紀に向けてのアジアにおける社会開発研究委員会(平成7年度の繰越)
(委員長:安田 靖 野村総合研究所理事)

 平成6年度の「21世紀のアジア地域における開発問題」研究委員会の延長上にテーマを経済発展を含む社会開発に拡大して、日本の協力の方向性に関する実践的提言をまとめた上で、平成8年7月には完了し、同年8月に報告書として取りまとめた。

2.委託調査研究(テーマのみ)

(1) ポスト・ウルグアイラウンドの国際経済機構
  -欧州と日本及び東アジアの関係強化に関する調査研究
(2) 北欧諸国とアジア諸国の高度情報化に関する調査研究(平成7年度からの繰越)
(3) 組合せによる持続可能なエネルギーの検討(平成7年度からの繰越)

3.受託等調査研究(テーマのみ)

(1) 地球環境問題影響調査・対応方策検討調査(地球温暖化対応方策検討調査)
(2) 環境審査等調査(温室効果ガス環境影響評価)
(3) 石油製品需給適正化調査
(4) 発展途上国エネルギー消費効率化基礎調査
  (アジア各国の石油を中心としたエネルギー政策の動向と地球環境問題への取
      組実態調査)
(5) 中国における共同実施活動関連調査
(6) 環境保全目的の貿易措置と途上国における環境保全に関する調査
(7) アジア太平洋地域の経済自由化に向けた日米中3ヵ国の協調に関する調査
(8) APECジョイント・インプレメンテーション・プロジェクトの実施活動
(9) 東南アジアにおける再生可能エネルギー導入可能性調査
(10) ポスト・ウルグアイラウンドの国際貿易体制の在り方に関する調査研究

4.助成を受けて行なう調査研究(テーマのみ)

(1) アジア地域における環境技術移転に関する調査研究
(助成元:イオングループ環境財団)

II.共同研究及び協力

(1) 環境と開発に関する中国国際協力委員会(CCICED:チャイナカウンシル)
環境と開発の両立に関して、中国政府に対し政策提言を行なうための国際的な協力の一環として、中国等に専門家を派遣し、各分野での現状分析、課題抽出、対応策の立案等を行い、政策提言に参画した。

(2) 環境技術協力国際フォーラム/再生可能エネルギー技術の商業化と国際協力ワークショップ
ソーラー、風力、小水力等のいわゆる「再生可能エネルギー技術」に関して、GISPRIとWRIはYBUL(インドネシアの環境NGO)の協力を得て、アジアの途上国、欧米、日本等の先進国ならびに国際機関からの関係者約30名の参加の下に「再生可能エネルギー技術(ソーラー、風力、バイオマス等)の市場形成」にかかわるワークショップを開催した。

 

III.セミナー、シンポジウム、フォーラム等の事業

(1) 国際シンポジウム「21世紀の日本-繁栄か衰退か-」

  本シンポジウムは地球産業文化研究所、讀賣新聞社、米日財団の共催で、平成8年9月30日(月)経団連ホールにおいて開催した。
 このシンポジウムは弊研究所がこれまで3年をかけて実施してきたジャパン・ヴィジョン・プログラムの報告書が出来上がったのを機会にシンポジウムの形で発表したものである。
 シンポジウムは3セッションに分かれており、第1セッションは北岡伸一立教大学教授の報告書である「日本外交の改革」、第2セッションは中西輝政京都大学教授の「冷戦後の日本の安全保障のありかた」、第3セッションは島田晴雄慶應義塾大学教授の「衰退か繁栄か-日本の長期経済戦略-」に基づいて各先生に発表して頂きパネリストにコメントしていただく方法で行われた。
 なお、米日財団のジュリア・C・ブロック米日財団理事長による特別講演も行われた。

(2) 「Japan Vision Programme」米国セミナー

  財地球産業文化研究所は、これまで3年間をかけて実施してきた「Japan Vision Programme」(21世紀の日本-繁栄か衰退か-)の報告書発表のため96年12月12日、13日に米国、ワシントンはGeoregetown University$ニューヨークはJapan Society の協力をえて開催した。

(3) 東アジアの持続可能な発展に関するリージョナルワークショップ

 平成8年10月2日(水)から4日(金)にかけて、2050プロジェクトの一環として、当研究所、WRI、ブルッキングス研究所の共催により、東京のアルカディア市ヶ谷において開催した。各セッションの構成を以下に示す。各セッションでの発表は、中国、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、台湾、タイ、アメリカ、日本の計9ヵ国、約30名の参加者によって行われ、討論は、一般 参加者も含め、延べ約 100名によって行われた。

  • 基調講演   ;「東アジアの持続可能な社会の実現に向けて」 (東京理科大学教授 森 俊介)

  • セッション-1;「持続可能な社会実現のための展望と障害」(全参加国)

  • セッション-2;「開発ビジョンとその展望」

  • 特別講演  ;「東アジアの持続可能な成長の可能性と限界」(明治学院大学教授 竹内 啓)

  • 討論総括  ;(慶應義塾大学教授 茅 陽一)

(4) GLENTEX '96シンポジウム

 平成8年5月21日(火)から24日(金)に、当研究所は、「持続可能な社会に向けて」と題したパネル展示と、「環境問題と消費者」とのテーマによりセミナーを開催した。

(5) 電子フォーラム

 平成8年度は、インターネット上にホームページを開設すべく、設計・データの整備を行った。ホームページは、平成9年6月には開設した。

 

IV.情報の収集及び提供

(1) .調査研究に関する報告書等の提供
(2) .機関誌「地球研ニュースレター」(和文)及び「GISPRI」(英文)の発行
(3) .地球環境問題(企業)懇談会開催による情報の提供

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