1999年1号

「環境保全と成長の両立を考える」 研究委員会中間報告 - 第1回日米共同会議の内容について -


 「環境保全と成長の両立を考える」研究委員会(委員長:奥野正寛東京大学経済学部教授)は、気候変動問題が環境問題であるとの認識の下に日本と米国の学者が共同で研究を行なうことにより「環境保全と成長の両立」を目指した対応を検討し政策提言を行なうことを目的として昨年5月に発足いたしました。発足以来、日本国内で合計4回の委員会を開催したのち、’98年10月19・20日の2日間、アメリカのワシントンDCで、日米両国の学者による共同会議を実施しました。本会議は地球産業文化研究所とアメリカの民間シンクタンクであるリソースィズ・フォー・ザ・フューチャー(Resources For the Future、通称RFF)によって、日米の学者が共同研究を行う場としてワークショップ形式で開催したもので、今回がその第1回目となりました。

 本研究委員会については、昨年7月号のニュースレターでその概要をお知らせしましたが、今回は日米共同会議で話し合われた内容について簡単にお知らせしたいと思います。


【日米共同会議での議題】

 今回の日米共同会議は、初めての会議(キック・オフ・ミーティング)ということから、議題は日本、アメリカ両国の関心が深いテーマ、主として柔軟性メカニズム(排出量 取引・CDM・共同実施)と途上国の参加問題に焦点をあてた会議となりました。

【日米共同会議に向けての日本側委員会の論点整理】

 日本側では、10月の共同会議までに、国内の研究委員会において、共同会議の議題に促した形での論点の整理を行ない、以下の5項目を論点としてまとめました。まとめた論点については、共同会議の冒頭に発表しました。なお、内容の詳細は、後ほど紹介する地球産業文化研究所のホームページに掲載していますので、ご覧ください。

  1. 柔軟性措置については制度的な条件整備について充分な検討をすべき。

  2. 柔軟性措置の制度設計にあたっては中立的・客観的な検討がなされるべき。

  3. 途上国の参加のためにも、CDMをはじめとする柔軟性措置の適切な導入を。

  4. 途上国の参加問題について建設的な取組を。

  5. 革新的な技術開発への取組を。

【日米共同会議での議論の概要】

 共同会議は1日半にわたって行なわれました。会場はワシントン市内のガバナーズ・ハウス・ホテルでした。10月のワシントンはこの時期としては暖かく、たいへん穏やかな気候でした。会議には日米合せて約20人ほどの学者が参加し、有意義な議論を行なう事ができました。

 今回の共同会議の概要について、話題となった内容を整理した結果 、以下の10の項目にまとめたペーパーを作成することができましたのでご紹介します。なお、本内容は、今回の会議に出席された黒田昌裕委員(慶應義塾大学商学部教授)とマイケル・A・トーマン氏(リソースィズ・フォー・ザ・フューチャー上級研究員)のお二人により作成されたものです。

 なお、このペーパーは後ほど紹介する地球産業文化研究所のホームページに掲載しておりますので、ご覧ください。

  1. 柔軟性メカニズムは、気候変動枠組条約の目的の達成に関し、先進国と途上国双方の利益を促進する上で決定的に重要な要素である。

  2. 柔軟性メカニズムを現実世界で実施した場合、現在のモデル分析が示すよりも高いコストがかかることとなるなど、理想の姿には及ばないであろう。モデル分析の結果 は有用ではあるが、現実の世界で起こる多くの問題や予測不可能な出来事を組み入れられるわけではない。

  3. 附属書B諸国間の排出量取引は、各国の政策の間にばらつきがあったとしても機能しうるが、その場合、効率性は制約され、各国当局間での緊密な協力関係が必要となる。

  4. CDMプロジェクト活動は非常に価値のあるものとなりうるが、取引コストの問題や認定できる排出削減量 を定義し計測することの困難さから、この手法のもつ潜在的な可能性には限界がある。

  5. 非附属書B途上国が部門別、国別の温室効果 ガス排出のベースラインを任意に採用する場合、CDMに付随する諸問題は軽減されうる。ただし、非附属書B諸国自身にとって自国の利益に合致するとみなされなければ、こういうことは起こり得ず、また投資家側も認定される排出削減量 (クレジット)がどのように定義されるかについて明確に教えてもらわなければならない。

  6. 途上国に長期的には現在の附属書B諸国と同様に拘束力のある排出制限義務を負ってもよいという意思を増してもらうためには、途上国の能力開発、技術、資源移転が必要であるとともに、公平性により一層留意することが求められる。

  7. 柔軟性メカニズムは、市場であるべきであり、官僚機構であってはならない。

  8. 遵守義務の問題は、引き続き複雑な論点であり、さらなる試行が必要である。

  9. 「補足性」は、政治的な論点であり、柔軟性メカニズムの利点を損なわないように対応することが必要である。

  10. 関係者が共に勝利できる共栄(win-win)をもたらす解決は、現実に可能であり、特に途上国において進められるべきものである。

【ホームページの開設】

 このたびGISPRIのホームページ内に本研究委員会のページを、開設いたしました。今回ご紹介した日米会議の内容について掲載しておりますので、さらに詳しくご覧になりたい場合は、是非ご活用ください。

GISPRIホームページ  

「環境保全と成長の両立を考える」研究委員会ホームページ

 また、本研究会のアメリカ側のカウンターパートであるリソースィズ・フォー・ザ・フューチャー(RFF)の情報もご覧になりたい方は、RFFのホームページをご覧ください。なお、リソースィズ・フォー・ザ・フューチャーは、気候変動問題について広く研究をしております。第1回の日米共同会議概要の英語版については、RFFのホームページにおいて掲載しております。

RFFホームページ  

http://www.weathervane.rff.org/research/US-Japan_flex.html

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