1999年11号

チャイナカウンシルクリーナープロダクション(CP) 作業部会(WG) 第5回会議出席報告


9月22日(水)~24日(金)、中国・山西省太原市にてチャイナカウンシル(注)クリーナープロダクション(CP)作業部会(WG)第5回会議が開催され、事務局として参加したので以下の通 り報告する。

(注) 中国政府に対して環境と開発の統合に関する建設的な提案をするためのハイレベルの諮問機関であり、1992年4月に設立された。


1.会議の主な内容

(1)ワークショップ

 CPデモンストレーション都市として、中国政府から認定された山西省太原市におけるこれまでの取り組み状況について、太原市市長より後述の通 りの結果報告が行われた。その後、地元企業の太原鋼鉄、太原石炭ガス、太原セメントのそれぞれの代表者から、CP導入による具体的効果 として、大気汚染の削減、省エネの向上等の報告がなされた。この内、太原鋼鉄では、製鉄所構内発電所ボイラーへの電気集塵機設置、余熱回収、高炉ガス供給パイプライン整備によるガス排出量 削減、硫黄含有量1%以上の原料炭購入取り止め、等の対策をこれまで実施してきている。

 太原市では、また、CP活動の積極的な導入を促進するため、地元企業を対象とした「CP条例」の制定を目指している旨報告があった。CPWGメンバーからの意見、提案を受けて、本年中に上部組織の山西省人民代表大会常務委員会へ提示され、発効3カ月後に施行される。本条例が施行されると、中国国内都市におけるCP適用条例の第1号となる。罰則規定も明文化され、環境汚染や資源浪費等の条例違反企業は、その違反内容に応じて1万人民元以上10万元(1元=約13円)以下の罰金が科せられ、違反内容が悪質な場合は、操業停止や工場閉鎖といった強硬手段、さらに企業の責任者も刑事罰に処せられる内容が盛り込まれている。さらに、西暦2001年、2005年、2010年をにらんだ太原市CP中長期計画も紹介された。

 本ワークショップへは、CPWG共同議長である井出亜夫(いで・つぎお)慶應義塾大学教授、銭易(QianYi)清華大学教授、同WGメンバー、全人代環境資源委副主任、国家環境保護総局担当官をはじめ、地元の太原市行政府関係者等約70名が参加した。

(2)WG会議 

上記ワークショップに引き続き行われたWG会議では、本年10月のチャイナカウンシル本会議(内容は地球研ニュースレター12月号にて紹介予定)へ提示する、CPWGとしてのレコメンデーションについて討議し、以下を確認した。

  • CPは持続可能な発展を達成する上での戦略方策であり、製造業のみならず、他の産業にも適用しうる。

  • 太原市でのデモンストレーションプロジェクトから学んだ経験と教訓をとりまとめ、それらの情報を他都市や他産業でのCPプロジェクトへ提供する。

  • 全国レベル、地方レベル、産業分野別 でCPを中長期的に発展させていく上で、情報交換、訓練、法制化、R&D、リサイクルシステムや一般 住民の参加に関する目標設定が必要。
      また、来年以降のCPWGの活動計画としては、以下を実施する予定である。

  • 太原市におけるCPケーススタディに対する引き続いての支援と、同市の3カ年計画及び中長期計画策定への支援。

  • 中国でのCP国内セミナーと海外からの識者を交えた国際セミナーの開催を計画。

  • 他省、他都市でのCPデモンストレーションプロジェクトの検討(例:山東省)を行う。

  なお、次回のクリーナープロダクションWG会議は、来年2月下旬~3月上旬頃に中国国内で開催予定である。

2.太原市の取り組み紹介(太原市長 曹中厚氏)

 本年3月18日に「クリーンな生産実証都市」会議が、太原市で開催されて以来、本市は本会議の精神を忠実に実行し、CPを支援するための枠組みと環境整備を行ってきた。すなわち、社会基盤(インフラ)建設と環境対策の強化、生活水準の改善と環境便益の増進、そして法規制の整備である。

 これらにより、よりクリーンな生産が、全面 的に推進されるという状況が作り出された。 全市では、9つのタイプ、38のクリーン生産プロジェクトが計画されており、全投資額は、15億人民元(1元=約13円)に上る。現在までに流動床ボイラー、廃棄物燃料設備など15のプロジェクトがスタートしている。

 本年度では、基幹企業の20%がクリーンな生産を実施しており、太原鋼鉄グループ、太原化学工業グループなど10の主要企業が、クリーンな生産の監査をクリアするとともに、「太原クリーンプロダクション投資誘致プロジェクト」、「太原クリーンプロダクション実施スキーム」、「太原におけるクリーンな生産の中長期計画」、「太原市クリーンプロダクション条例」など一連の条例や行政規制を整備しているところである。

 これらの施策は、経済的にも、環境上も、社会的にも良い利益をもたらしており、継続的な発展の推進に重要な役割を果 たすとともに、市全体の経済発展にも貢献している。

(文責:伊藤裕之)

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