2001年5号

COP6再開会合を終えて

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 7月23日、ボンのマリティムホテルは、拍手の嵐に包まれた。COP全体会合で「ブエノスアイレス行動計画の実施のための中核的要素」が合意(政治合意)され、地球温暖化対策を推進する京都議定書を発効させる上で重要な一歩が刻まれたからである。

 地球温暖化対策、そして京都議定書に対する各国の立場は、それぞれ目的は共有しつつも、[1]経済社会の発展、成熟の様相や今後の発展、変化の可能性、[2]資源の保有状況や利用可能性、[3]今後の対策の余地の大きさ等、それぞれの国の置かれた事情により異なる。例えば、我が国のように省エネ努力を既に相当行ってきている国は、国民負担を最小限にするため、対策のコスト効率性を重視する。国内又は近隣にCO2排出原単位の少ない燃料資源を有しこれを容易に獲得できる国は、国内対策を重視する。

 COP6再開会合は、このような各国の立場の相違を克服し、骨格の定めしかない京都議定書の内容の詳細を煮詰めるため、7月16~27日、ドイツのボンで開催された。再開会合では、[1]全締約国が参加する全体会合の他、[2]吸収源、京都メカニズム、遵守及び発展途上国問題に係るグループ会合、[3]少数の締約国による会合、[4]アンブレラグループ、EU、G77+中国等の地域グループ内の協議、[5]二国間、地域グループ間の協議、[6]各国、各地域グループとプロンクCOP6議長(蘭環境大臣)との協議等様々なチャンネルの協議が積み重ねられ、解決の途が模索された。そして7月23日の全体会合の政治合意を導いたのが、同日午前5時から10時過ぎまで開催された閣僚級の少人数会合であった。これにより、各国間の利害対立が大きい主要事項について決着が図られたのである。

 日本からは川口環境大臣、植竹外務副大臣、朝海地球環境問題等担当大使、今野経済産業審議官、浜中地球環境審議官等多数の関係者が参加し、各省が共同して交渉に臨んだ。今年3月に米国のブッシュ大統領が京都議定書からの離脱を表明して以降、COP6の先行きには不透明感が漂っていた。我が国は、温室効果ガスの最大の排出国である米国の参加無くしては地球温暖化対策は実効性を持ち得ないとして、その参加を強力に働きかけてきたが、同時に、本会合には建設的に参加し、できる限り多くの事項についての合意を目指すことを基本方針として臨んだ。今回の成果は、このラインに沿ったものである。

 政治合意の主な内容は、次のようなものである。

(1) 京都メカニズムの利用は「補完的」で、国内対策が重要な要素を構成するものとする。排出量取引において売り過ぎを防止するための「留保」は、各国の割当量の90%又は各国の至近実績の100%のいずれか少ない方とする。
(2) 森林管理による温室効果ガスの「吸収量」の上限は、各国別に合意された量(日本の場合は13百万トン)とする。
(3) 発展途上国に対する資金支援は、「適切」かつ「予測可能な」レベルとする。
(4) 各国に不遵守があった場合課される措置は、制裁というより不遵守からの「回復」を目的とし、不遵守量の次期約束期間の割当量からの差引き等の緩やかなものとする。

 この政治合意を京都議定書と一体を成すものとして位置づけるには、中核的要素とそれ以外の広範な要素を含め詳細テキストを完成し、これをCOPとして採択する必要がある。7月23日の政治合意後もそのための交渉が行われたが、結局、時間切れとなった。この交渉は、10月29日からモロッコのマラケシュで開催されるCOP7で続行される。ロシアが重大な関心を示している吸収源の取扱い、不遵守があった場合課される措置の詳細等なお残された問題は大きく、再び困難な交渉が待ち受けている。また、6月の日米首脳会談の結果を受け開始された日米ハイレベル協議も、我が国として、米国に国際的枠組みへの参加を働きかけ、また地球温暖化対策の方途を模索する機会として重要である。

 最後に、この問題は、21世紀を通じて、すべての国民、事業者等が、息長く取り組まねばならない課題である。そしてそれは、従来の生活様式やビジネス・スタイルをそのままにして解決できるような生やさしいものではないことを指摘して、筆を置きたい。

 

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