2004年3号

平成15年度 「我が国エコビジネスのグローバル戦略」 研究委員会報告書 平成15年度日本自転車振興会補助事業

このたび、標記研究委員会報告書が完成したので、その概要を紹介する。


要旨
 日本企業同士の過当競争、韓国、現地企業等との価格競争力の激化により収益性が低下している。事業形態についても、ハード売切りが主体で、ソフト型で勝負する基盤が弱い。ともすれば、円借款等公的資金に依存する傾向が強く、高コスト、オーバースペック体質となっている。情報発信力、現地調査力、リスク管理力も弱い。欧米が戦略的なアプローチで東アジアのマーケットを席捲しようとしているのに比して、我が国は研究調査、技術移転の促進、制度構築支援、人材育成、資金援助といった広範な取組みを横断的に束ね、相互を機動的に連携させるような仕組みが未整備である。

 発展段階が異なる各国の事情を踏まえ、現地ニーズにあった品質を作り込み、現地化、顧客満足度の高い商品力等で収益性の向上を果たさねばならない。対東アジアの技術協力全体のビジョン、戦略的意義についても共有しておくことも重要であろう。更には、ソフトのシステム輸出と、上流・下流を含めたソリューションをオールジャパンで提案することで、各国からの信頼を定着させていくことが必要である。

 大学や援助機関と協働し、現地の専門家も巻き込み、実態調査や環境政策策定の支援を通じた情報を入手して、環境サービス部門のノウハウを持つ担い手を育成しなければならない。
ITを活用した環境マーケティングのツールや、環境負荷削減のビジネスモデルや、環境教育、環境保全型ライフスタイルのモデルを輸出することで、途上国の環境負荷削減と生活の質向上に資することは何よりの国際貢献となろう。また、企業主導によるグリーン化や経営方針の根本的な見直し、経営者の理念が変革を加速することを忘れてはならない。

 環境協力は、各国と緊密なパートナーシップを醸成する上で、重要なコンポーネントである。援助政策における国益重視を明確にして、輸出企業の市場開発を更に促進させることが望ましい。
支援については、日本企業のニーズに即した事業展開を図るべきで、相手国要請型から日本政府提案型に軸足を移行して、JI/CDM分野において先導的役割を果せるよう、制度上の制約の除去を図ることが望まれる。環境保全を評価して、企業の環境配慮を促すような金融機能のグリーン化の果たす役割も大きい。また、あらゆるレベルで徹底的な情報発信を行い、我が国が最も得意としている環境技術が途上国から見えやすくすることが大事である。今、我が国は、個別最適から全体最適で総合戦略を見直す時機にある。

○ 研究委員会名簿(敬称略、五十音順)
委員長   山本良一   東京大学国際産学共同研究センター・教授
委員   大橋照枝   麗澤大学国際経済学部国際経営学科教授
    木佐貫純也   NEDO国際事業部国際事業企画課長
    小島道一   アジア経済研究所研究員
    中原秀樹   武蔵工業大学環境情報学部環境情報学科教授
    中村芳生   JETRO貿易開発部アジア支援課長
    番 功朗   三井物産株式会社電機プラントプロジェクト本部次長
    星野紀久   日本機械輸出組合貿易業務部門グループリーダー
    前田正尚   日本政策投資銀行政策企画部長
    村田敏哉   千代田化工建設株式会社渉外室副室長
    森田陽一   富士化水工業株式会社常務取締役
講師   熊野英介   アミタ株式会社代表取締役社長
オブザーバ   國友宏俊   経済産業省産業技術環境局環境政策課環境調和産業推進室長
    根井寿規   経済産業省貿易経済協力局技術協力課長
    村崎 勉   経済産業省製造産業局産業機械課国際プラント推進室長
事務局   木村耕太郎   地球産業文化研究所専務理事
    本根正三郎   地球産業文化研究所理事・事務局長
    小田原博史   地球産業文化研究所地球環境対策部長

○ 報告書目次
第1章   委員長所感(山本委員長)
第2章   ITを活用した環境マーケティングでの国際貢献(大橋委員)
第3章   NEDO国際事業とエコビジネスのグローバル戦略(木佐貫委員)
第4章   産官学NGOのコラボレーションによる担い手の育成(小島委員)
第5章   アジアにおける循環型社会形成に向けてーリサイクルを中心に(小島委員)
第6章   企業の環境対策と社会的受容性(中原委員)
第7章   制度導入支援―タイとインドネシアを例に(中村委員)
第8章   プロジェクトリスクーその分析と対応策(番委員)
第9章   アジア圏廃棄物処理(星野委員)
第10章   金融機能のグリーン化と環境配慮型金融(前田委員)
第11章   エコマーケット創出基盤整備(村田委員)
第12章   環境エンジニアリング海外展開(森田委員)
第13章   東南アジア処理会社(熊野講師)

(文責 小田原博史)

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