2004年4号

平成16年度「貿易と環境の調和に関する調査研究」 ~CDM/JIのリスクとその軽減策に関する調査研究委員会~

 地球全体に影響を及ぼす環境問題が深刻化している今日、貿易と環境の調和を達成し持続可能な発展を目指すことは、世界各国、特に先進国にとって当然のこととなっており、経済社会システムの環境側面からの見直しが活発に行われるようになってきている。

 国際社会でも地球サミットをはじめ、様々な場で経済発展と環境保護の両立が叫ばれており、自由貿易の促進を掲げるWTOでも、協定前文やドーハ交渉アジェンダに環境の保全と保護の重要性を明記している。しかし、未だ正当な環境保護政策と偽装的な貿易保護主義の区別の方法等に決着はついておらず、「貿易と環境の調和」という概念は産業界も巻き込んで暗中模索を続けている。先進国と途上国の不信感に基づく対立も年々激しさを増しており、今後の動向を予測するのは非常に困難である。

 このような背景を受け、本年度は、平成15年度に行った気候変動枠組み条約(UNFCCC)及び京都議定書(KP)とWTO協定の総論的問題点の整理及び検討結果をベースに、引き続き温暖化防止対策と貿易、特に投資問題について研究を行うこととした。世界各国が温暖化防止対策を行う根拠としてまず京都議定書が挙げられるが、京都議定書そのものには貿易問題となるような要素がないことを去年度の委員会で確認した。そこで、本年度は京都議定書の削減目標を達成するために利用される京都メカニズムのうちCDM及びJIの国際取引上のリスクについて取り上げ、委員会形式で検討を行う。

 CDM及びJIはプロジェクト実施国における温暖化効果ガスの削減を行い地球全体の問題である温暖化の防止に寄与するプロジェクト活動であるが、企業の技術移転を促進し、ビジネスチャンスを広げていく機会にもなる。従って、CDM及びJIプロジェクト活動はまさに貿易の促進と環境保護の両立を目指したものに他ならない。しかし、現状ではプロジェクトの承認プロセスが非常に煩雑な上、税制、投資といった各主要途上国の国際取引上の制度の複雑さ故に、民間企業はそれをリスクとしてCDM及びJIプロジェクト活動の実施を躊躇している。本委員会では、企業にとっての不確実性によるリスクを軽減し産業界のより活発な経済活動を促進するとともに、我が国の京都議定書の目標達成をより確実なものにすることを目指すため、より具体的にCDM及びJIの実施に伴うリスクの調査を行い、その軽減策を模索する。

 委員会は、委員長に山口光恒氏(慶應義塾大学経済学部 教授)をお迎えし1ヶ月~1ヵ月半に1回を目安に年間5回程度行う予定である。(委員一覧は下記をご参照ください。)


委員一覧(五十音順・敬称略)
委員   稲田 恭輔    (国際協力銀行 企業金融部第5班 調査役)
委員   大沼 あゆみ   (慶應義塾大学経済学部 教授)
委員   西尾 龍太郎   (ナットソース・ジャパン(株) マネージャー)
委員   西村 邦幸   ((株)三菱総合研究所 主席研究員)
委員   波多野 順治   (三菱証券クリーン・エネルギーファイナンス委員長)
委員   増田 正人   ((有)エムフォーユー 代表取締役)
委員   山田 和人   (パシフィックコンサルタンツ(株)地球環境部 部長代理)


事務局:蛭田伊吹

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