2006年2号

ポストCOP11及びCOP / MOP1セミナー開催報告 - GISPRI / IGES 共催 -

セミナー概要

 2005年11月28日から12月9日までカナダ・モントリオールにて国連気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)及び京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP 1)が開催されたのを受けて、財団法人地球産業文化研究所(GISPRI)と財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)は2006年1月27日に全社協・灘尾ホールにおいて標記セミナ-を開催した。
 本セミナーでは、産業界、コンサルタント、研究者、学生など地球温暖化問題に関心をもつ321名の出席のもと、実際にCOP11及びCOP/MOP1で交渉に当たった政府各省庁の担当者を講師に招き、交渉経緯や決定事項の報告及び会場からの質問への回答を通じて、地球温暖化問題における国際交渉についての情報を包括的かつタイムリーに提供することにより、セミナー参加者の本問題への更なる理解促進が図られた。



プログラム

□  COP11 及び COP / MOP1 開催結果の報告 (各35分)
13:10   外務省   気候変動室長   久島 直人
13:45   経済産業省   地球環境対策室長   坂本 敏幸
14:20   環境省   国際対策室長   水野 理
14:55   林野庁   森林吸収源情報管理官   赤木 利行
□  質疑応答
  15:50 - 16:55
<コーディネーター>
  財団法人地球産業文化研究所     専務理事     木村 耕太郎
<回答者>
  外務省   気候変動室長   久島 直人 
  経済産業省   地球環境対策室長   坂本 敏幸 
  環境省   国際対策室長   水野 理  
  林野庁   森林吸収源情報管理官   赤木 利行 


外務省 気候変動室長 久島直人氏
  ・ 会議の雰囲気
COP、COP/MOPの同時開催のため、議事進行の混乱が懸念されたが、両会議とも同一の議長が同じ会場で続けて進行したので円滑であった。
フランス語を第一言語とするケベック州モントリオールでの開催であったため、プレナリーでは、フランス語のアルファベット順に国が並んだ。また、京都議定書(以降、議定書)締約国は黒地に白文字で国名が書かれたプレート、議定書非締約国は白地に黒文字のプレートと区別されていた。

・将来枠組み
3つのプロセスが今後平行して進行することとなった。
  ① 条約プロセス
「長期的行動に関する対話」であり、交渉というよりダイアログということである。
米国も参加する「対話」であり、COP決定されたもの。
CO12、COP13で結果を報告。
交渉、約束などを予断しない。
最大4回までのワークショップを開催する。

② 議定書3条9項(附属書Ⅰ国の目標)
議定書に第一約束期間の終了の7年前に始めると記載されており、それに沿って行われるプロセス。

③ 議定書9条
議定書全体のレビュープロセスであり、COP/MOP2で行うという規定があるが、そのレビュー作業の準備を行うもの。
②は附属書Ⅰ国のみの数値目標の話である。③で途上国目標についても議論を行う。日本としては、②③はパッケージで交渉に臨む方針である。

・議定書の運用と改善
マラケシュ合意を採択した。遵守についてのサウジアラビア提案(議定書改正)については、方向性の予断なく2年先送りとなった。
CDMなど議定書の改善について合意がされた。
適応に関する5カ年作業計画が策定された。昨年のブエノスアイレスでの決定を受けて策定されたものであり、途上国を中心に要望が強かったものである。
  ・ 日本の果たした役割
全体の議論の流れを作ったのが日本であったと感じている。例えば、将来枠組みでは、日本、EU、途上国(G77+China)が案を出した。途上国は議定書3条9項に基づく先進国の目標などを主張していた。日本は、議定書3条9項については、議定書全体の議論があって、その中で併せて議論されるべきだと主張していた。
今後に向けて、はっきりとした論点が明確になったことは、日本の果たした役割が大きかったと思う。
遵守について、サウジアラビアは議定書を改正する提案をした。附属書Ⅰ国が不遵守の場合、法的拘束力をもたらすという提案である。これに対し、日本は法的拘束力を持たせる事が逆効果であると提案した。もし、日本が将来枠組みや遵守について、提案を行わなかったとしたら、もっと途上国よりの結果になっただろう。

・ 今後について
2008年は、色々な意味で節目の年となりそうである。第一約束期間が始まる年であるとともに、G8日本サミット、米国大統領選挙などがある。
2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博が開催される。今後、中国を巡る情勢は非常に変わっていくかもしれない。そして、北京オリンピックや上海万博が大きな節目になる可能性もある。日本で言えば、東京オリンピックと大阪万博開催は、国際舞台での存在感が増したという大きなきっかけとなった。これらの事柄は、直接、温暖化問題に関係するわけではないが、将来の議論を考えると、途上国の主要排出国である中国とインドを避けることが出来ない。国際社会での中国とインドの立場が温暖化問題に影響を与えることにも成り得る。
議定書の枠組みだけにとらわれず、多様なフォーラムでの活動を行っていくことが重要である。アジア太平洋パートナーシップ(以下、APP)では、米国、中国、インドなどと実質的な協議を始めている。また、日本のイニシアティブによる非公式会合も開催している。これは過去4回開催しており、東京にて20数カ国の先進国と途上国の代表が終結し、交渉ではなく率直な意見交換を行うもの。
先進国と途上国の対立は非常に激しいものである。しかし、途上国にも色々な立場や状況の異なった国がある。
日本が将来枠組みの議論のイニシアティブをとっていくためにも、議定書の目標達成は必要である。やることをやったうえで主張していかないと説得力がない。
内政と外交が一体性を持つことが重要である。国内の目標と政策をしっかり行っていかないと、外交で主導権を取ることは難しいだろう。

経済産業省 地球環境対策室長 坂本敏幸氏
  ・ 各国の交渉ポジションと会議の雰囲気
南北対立と言われているが、議定書3条9項を巡っての先進国と途上国が激しい交渉であった。日本やEUなどは、気候変動の問題は先進国だけの取り組みだけでは解決出来ないとのポジションであった。途上国のポジションは、アジェンダに書かれているのは議定書3条9項だけではないかと訴えていた。
1992年に条約、1997年に議定書が合意されたが、その当時、誰も現在の中国の経済発展を想像した者はいなかった。条約と議定書のどこの条文を見ても、途上国にコミットメントを求める条文はない。途上国の立場から見れば、有利に記載されている条約・議定書について譲るインセンティブは無く、もし譲ったとすれば、その途上国の交渉官は、後世の交渉官から非難されることになりうる。

途上国は、G77+Chinaというグループで発言する。G77+Chinaは、130数カ国からなるグループである。この中で、主流になるのはインドや中国といった大国である。途上国の中には、小島嶼諸国などはインドや中国も取り組みを始めるべきだと発言する国もあるが、G77+Chinaの中での主流の意見にはなっていない。

米国は、将来の交渉に結びつかない対話に参加することになった。COPが始まる前に20数名の上院議員が他国のコンセンサスを妨害することは止めるべきだとブッシュ大統領にレターを書いているが、こうしたことも米国の対話への参加につながった一つの理由になったのだろう。この対話は、2007年末まで続くが、2007年はブッシュ政権のままであり、対話の期間が終了した後、米国が何か交渉に移るかどうかの見通しは立っていない。また、米国の議定書に対するスタンスは非常に徹底しており、COPのセッションがCOP / MOPのセッションになると米国代表団は一斉に席を外していた。
過去のCOPにおいては、日本とEU間で意見が対立することが非常に多かった。しかし、今回は共同歩調を取ることが出来た。これは、途上国や米国を含めたグローバルレスポンスが重要であるという点で一致したためであろう。日本とEUは、世界全体の取り組みが重要であると主張しており、その中の一環としての3条9項があるという主張を行った。この背景には、英国がEU議長国だったことが挙げられるだろう。ブレア首相は温暖化問題に非常に関心が高く、中国・インド・米国が参加して初めて将来枠組みが成り立つと色々な場面で発言していた。
将来のEUのポジションについて考えると、日本と協調して途上国の意義ある取り組みを求めてくれるかどうかで幾つかの重要なポイントがある。一点目は、EUがEU- ETSの円滑な継続が極めて重要であると考えており、そのためには先進国の数値目標が必要である。先進国の数値目標と途上国のコミットメントを求める事とのバランスが現時点と変わってくる可能性がある。二点目は、EU議長国の交代による影響が出る可能性がある。
ロシアは、最終日のプレナリーにおいて、3条9項の中に途上国の自主的なコミットメントも含めるべきだと主張していた。ロシアを除く全ての国は、その問題は3条9項の中で議論すべきイシューでないと主張していたが、ロシアの態度は頑なであった。ロシアの交渉ポジションを予測するのは難しい。
第一約束期間については、ロシアの議定書批准次第で発効するかどうかというロシアに有利な状況になり、ホットエアー及びWTO加盟のEUによる後押しにより批准をした。しかし、第二約束期間においては全く違う状況である。第二約束期間の目標値設定プロセスは、議定書の改正を必要とする。議定書の改正には締約国の合意が求められるが、合意が得られない場合は、投票を行い議定書批准国の4分の3以上の賛成があれば批准プロセスが始まる。そして、批准した国に対して発効する。ロシアを枠組みに組み込ませたままにするためには、ロシアの第二約束期間の交渉ポジションへの注意が必要である。
1月23日、カナダの総選挙の結果、自由党が敗れ保守党が12年ぶりに政権を取った。保守党は従来から議定書に非常に批判的な政党であった。保守党のハーパー党首は、議定書のことを「カナダがサインした国際合意の中で史上最悪の物である」と述べている。メディアなどでは、カナダの議定書脱退の可能性を示唆しているものもあるが、今回のカナダ総選挙において、保守党が過半数を取れなかったので議定書脱退の可能性は無いだろう。COP11から一年間、カナダが議長国になる。最初は、議定書をサポートする自由党が政権を握っていたが、今後は議定書反対の保守党が政権を握るので、カナダの動向にも注意が必要である。
APPやG8などは国連の枠組には含まれないが、気候変動問題を解決し得る重要な取り組みである。

・ CDMとJIについて
今回のCOP / MOPの決定のポイントは、Future CDMの推進を通じた省エネCDMの促進、小規模CDMの定義見直し、 途上国の政府プログラムの下でのCDMの推進、炭素回収・貯留のCDM化の検討の開始などで大きな前進があった。
CDMの前進に効き目のある措置として、事務局経費の積み増しの決定があった。2006年、先進国は820万ドルの追加の任意拠出を行い、CDM理事会をサポートする。CDM理事会の人員も12人から33人に増加する。2008年以降は、share of proceedsで1CER当たり0.2ドルの課金がかかる。
Future CDMは日本政府が進めているものである。省エネプロジェクトは顕在化していないが、我々が率先して方法論を作って、プロジェクトディベロッパーに使用して頂きたいと考えている。方法論の申請を4月位までに行っていきたい。
日本政府は、小規模CDMの定義の拡大を主張してきた。この点について、COP / MOP2に向けて検討し結論を出すことになった。
政府プログラムのCDMについては、今後認めていこうという結果になった。
炭素回収・貯留の方法論を日本のプロジェクトディベロッパーが二件出しているが、CDM理事会はCOPに判断を求めた。SB24においてワークショップを開催し、COP / MOP2に向けて結論を出すことになった。
JIについては、JI監督委員会が発足した。日本エネルギー経済研究所の工藤氏がメンバーに選出された。CDMで認められた認証機関・方法論などを使用出来るようにするといった、CDMで蓄積された経験をJIでも活かしていこうという合意が得られた。


環境省 国際対策室長 水野理氏
  ・会議のポイント
日本政府の各省庁は、COP11及びCOP / MOP1に交渉に関して、どういった課題にどういったポジションで望もうということで一致協力して取り組んできた。そのため、本セミナーにおいて、どの省庁の方が説明しても基本的な方向が協調したものになる。
モントリオール会合においては、議長であるカナダのディオン環境大臣がイニシアティブを取り、会議をまとめるとともに事前に各国を回りコンサルテーションを積極的に行った。カナダは、会議開催の前から3つの「 I 」がポイントであると主張していた。Implementation(実施)・Improvement(改善)・Innovation(創造)である。Implementation(実施)は議定書を実施するというもの。Improvement(改善)は、CDMのようなシステムをどのようにより良くするか、などがある。Innovation(創造)は、将来の行動をどうするのかを創造的なアイディアを出していこうというもの。そして、3点の「 I 」とも大きな成果が得られただろう。この中でも、Innovation(創造)の成果が重要な成果であった。

条約の下での対話においては、再三再四、将来の交渉に繋がるものではないと強調されている。米国・中国・インドも含めて議論をするということで大きな成果ではあるが、直ちに次期約束期間の約束に繋がるとはいかない。よって、如何に次期約束期間に結び付けていくかということが大事であろう。


・ 将来枠組みについて
3条9項について、決定案を日本は提案した。EU及びG77+Chinaも提案した。この日本の決定案を見れば、将来について日本がどのような事が大事であると考えているかが分かる。
 
日本提案の概要
1) 急速な時代の変化が、気候変動対策に対してよりグローバルな規模での行動を必要としている。
条約の究極的な目的を目指していることを再度確認しておく必要がある。世界の国々が互いに理解しあいながら協力していくことが大事である。
2) 議定書は究極的な目的を達成するための重要な一歩であるが、最初の一歩にすぎない。
我々の目標は、条約の2条の究極的な目的の達成である。排出量と吸収量のバランスを取ることが大事である。現在、地球全体のCO2排出量は63億炭素トンであるが、吸収量が31億炭素トンである。
3) 議定書附属書Ⅰ国は議定書の約束について最大限努力を行ってきた。
4) 議定書附属書Ⅰ国からの温室効果ガス排出量は、世界全体の温室効果ガス排出量の大きな割合を占めているとは言えない。
米国を除く附属書Ⅰ国の排出量は、世界全体の30%強でしかない。
そして。非附属書Ⅰ国の発展により、将来的には20%を割り込むという予測もある。よって、条約の究極目的には、附属書Ⅰ国だけの取り組みだけでは不十分である。
5)
非附属書Ⅰ国の排出量は急激に増加している。
6)
2013年以降の附属書I国の約束について踏み込んだ検討の開始。
7)
議定書9条、条約の見直しにも視野を広げる。
 

今後、3条9項と議定書9条を、どのように結び付けていくかが重要。


・ 遵守について
遵守とは、議定書の約束が守れなかった時にどのようなペナルティーを課すかというものであり、3点ある。
 
不遵守の場合、排出超過分の1.3倍の次期約束期間からの割当量の差引
次期約束期間における遵守確保のための行動計画の策定と遵守委員会の審査
排出量取引による転売の禁止

遵守について、COP / MOP決定とするか、議定書改正(サウジアラビア提案)とするかでは、内容の違いは大きくない。しかし、手続きの違いは大きな違いである。
議定書改正では、締約国が合意を得られるよう努力を行い、合意を得るのが難しい場合は、4分の3以上の賛成で成立する。また、非常に時間がかかる。そして、改正議定書については批准した国だけに適用されるので、折角、京都議定書締約国が取り組みを始めようという段階なのに、改正議定書を批准した国と批准しない国で分かれてしまう。また、改正議定書により、罰則を厳しく表面に出すと新規に参加する国も参加しづらくなる場合がある。COP / MOP決定の方がencouragingであろう。


議定書の中での日本が基準年比マイナス6%というのは国際法上の義務であり、法的拘束力がある。不遵守の場合の、1.3倍、行動計画の策定、排出量取引による転売の禁止などが、法的拘束力を持つかどうか議論された。また、サウジアラビア提案については、今後も議論される。


・ 適応について
ブエノスアイレス作業計画に基づいて、今回の適応5カ年計画が策定された。適応問題は途上国を中心に関心が高まっている議題になってきた。小島嶼国などは、海水面上昇などにより国が消失してしまうという危惧がある。色々な緩和策の努力をしても、温暖化の影響をゼロにすることは出来ないという考え方が認識されつつある。そして、悪影響への対応が必要になる。今回の適応5カ年計画は、目的や取り組みの範囲などの案であり、具体的な取り組みは今後も議論が必要になっている。


林野庁 森林吸収源情報管理官 赤木利行氏
  ・ 吸収源に関する情報提出不履行の基準
インベントリの品質が著しく劣る場合、議定書目標達成への吸収量の算入を差し止めるための判断基準を検討した。
吸収源に関する情報提出不履行の基準の方法論について、日本提案とEU提案の間で議論となったが、最終的には事務局調整案で合意した。

当初見込みからの調整量については9%以下であれば認めるということで決着した。約束期間のある年におけるある活動の調整の高さ(M)は、「その活動の調整済みの推計値から、その活動の提出値を引いたもの」をその活動の全てのコンポーネントの絶対値の合計値で除して0.18を乗じたパーセンテージで表される。M≦9(%)

 
  * 0.18は、附属書Ⅰ国の総排出量に対する吸収源排出・吸収量の平均割合の指標として選択

・ 伐採木材製品(HWP)の取り扱い
実質的な議論は時期尚早、2006年改定IPCCガイドラインの策定状況を踏まえて今後議論することとなった。
デフォルト方式、ストック方式、プロダクション方式、フロー方式などがある。国により、それぞれの方式に有利不利があるので、交渉は難しいであろう。

日本の木材の8割は海外からの輸入によるものなので、日本の場合、フロー方式は不利になり、ストック方式やプロダクション方式が良いであろう。しかし、木材輸出国などは、フロー方式を主張する国が多く、意見が対立している。




・ 途上国に関する森林減少に由来する排出
パプアニューギニア、コスタリカからの提案
 
森林減少によるCO2排出量が全体排出の最大で1/4程度を占める。
 
森林減少を抑制するための努力を適正に評価(インセンティブ)する仕組みをUNFCCCの中に設ける必要性がある。
各国とも議論の開始には賛同。インセンティブ付与やスケジュールについて議論となった。途上国側は早急な検討を主張、先進国側は慎重な技術的議論を主張した。
次回SBSTA24で議論を開始し、2年後のSBSTA27で結果を報告することで決着した。
この問題は、途上国が森林減少を食い止めるということで、ある意味排出を抑制するという途上国のコミットメントに繋がる可能性がある。インセンティブの問題もあるが、先進国は途上国側の意識を発展させていくことが重要である。

・ 小規模CDM植林に関する簡素化方法論
ベースライン方法論:
リーケージ指標(世帯数、生産物)が10%未満であればリ ーケージは発生しない。10%以上の場合は炭素蓄積の15%。50%以上の場合、推定不可。
モニタリング方法論: ベースラインのモニタリング必要なしと簡素化されている。
追加性の証明: バリア(経済的、制度的等)の最低一つを証明すれば良いと簡素化されている。
   
   
・ CDM植林追加性ツール(EB21) <小規模CDMは対象外>
ステップ0 ARプロジェクト開始日について予備的な審査
ステップ1
現在施行中の法律及び規則に矛盾しないARプロジェクト活動の代案の判定
ステップ2 投資分析 (ステップ2とステップ3のどちらかを実施)
ステップ3 バリア分析 (ステップ2とステップ3のどちらかを実施)
ステップ4 CDM登録の影響

・ CDM植林活動における土地適格性の定義
以下の点が必要となる。
 
プロジェクト開始時に当該土地が森林でなかったことを証明。
 
活動が再植林又は新規植林活動であることを証明。
  また、上記二点を証明するために下記の情報の内、一つを提示する必要がある。
 
1)
地上データに補足された航空写真、衛星データ
2)
地上調査(土地使用許可、土地利用図、地籍図、所有者登録)
3) 1)及び2)が入手不能な場合、参加型農村調査法に基づく書面による証言

・ 吸収源に関する共通報告様式(CRF)の修正

COP9での採択に伴い改訂された共通報告様式(CRF)について、利便性の向上等から技術的修正を行い、2007年報告から使用することとなった。


・ その他、今後の主な論点
持続可能な森林経営との調和という問題もある。「炭素」という観点だけで捉えると早く成長して沢山吸収する木材が良いとなるが、生物多様性の観点から見るとどういった影響があるかも考えなくてはいけない。
直接的人為の分離(ファクタリングアウト):基準年以降の直接的な人為活動による吸収量のみを取り出すこと
IPCCでも、科学的な手法開発は現時点では不可能と判断された。
科学的な人為の効果と、その他の効果の間には、時間的・空間的に作用する複雑な相互作用があるので、手法開発のためには、ローカルからグローバルのレベルに及ぶ意図的な協調の下での、実験、観測及びモデリング等長期にわたる取組が必要
第1約束期間においては「分離」実施したかどうかを報告しなくてもよいこととされた。




質疑応答
 
Q1 政府の目標達成計画にある、3.9%のシンクを達成するにはどんな対策が必要か?
A1 (林野庁 赤木管理官) 日本のケースでは1,300万トンが上限値で、それを換算すると3.9%となる。森林整備のための施策が必要で、取り組んでいるが十分ではない。現状では3.9%は難しい状況だろう。
   
Q2 私有林はどうカウントされるか?
A2 (林野庁 赤木管理官)森林には大きく分けて民有林と国有林がある。民有林はさらに公有林、私有林と分類される。3.9%を達成するにはこれら全て、特に人工林を適切に管理しなくてはならない。十カ年計画に基づいて施策を行っているが、財政難もありうまく進んでいるとはいえない。カウントする際はこれら全ての森林を含める。
   
Q3 京都議定書の遵守規定について、議定書改正に対して、COP/MOPの決定書がencouraging というのはどういうことか。議定書改正と異なるのは手続き上だけの問題か?
A3 (環境省 水野室長)改正となると各国が国内に持ち帰って批准手続きを踏まなくてはならない。また、国際法上の問題になるので、決定書の方がencouragingということ。遵守委員会(Compliance Committee)の中には促進部があり、そこでは京都議定書遵守を促進(encourage)するところ。このようにシステム内部に促進するものがある。お互い非難しあうのではなく、促進しあうことが重要。
   
Q4 議定書を改正しなければ、実際次期約束期間で1.3倍引くことはないのか?
A4 (環境省 水野室長)決定書でも政府が公式に合意したことなので当然責任は発生するだろう。
(外務省久島室長)水野室長と同意見。実効上は改正でも決定書でも同じだろう。
   
Q5

Future CDMの方法論は誰が作っているのか。これらはいつ承認される見込みか?具体的なプロジェクトはあるのか?

A5 (経済産業省 坂本室長)Future CDMでは省エネ方法論を8つ、交通分野の方法論を3つ開発してきている。日本政府のイニシアティブであるが、参加しているのは方法論を開発する世界中の専門家である。また、方法論は具体的なプロジェクトのPDDとともに提出するので、具体的なプロジェクトはもちろんある。承認時期については、CDM理事会が2月と5月に開催されるが、5月の理事会で承認されることを目指して準備を進めている。
   
Q6 2013年以降のCDMの行方は?
A6 (経済産業省 坂本室長)炭素価格をインセンティブとして途上国でGHG排出を削減するというスキームは必要であるというのが日本政府の考えである。しかし同時に、途上国にも意味あるコミットメントが必要であると考えている。今の制度は数値目標のある附属書I国とない非附属書I国という区別を前提としている。我々は非附属書I国のコミットメントも必要であると考えているので、その上でCDMのようなスキームを設けるとなると、追加性など検討しなければならないことは山ほどある。2013年以降のCDMについては、次期枠組みで途上国のコミットメントがどうなるかの議論と平行で考えていかなくてはならない。
(環境省 水野室長)COP / MOP決定にもあるように、日本政府としては今のままの制度を続けていくというわけではないが、このような仕組みは続いていくだろうと考えている。
   
Q7 将来枠組みをどのような期限で、どのように行っていくか?
A7 (外務省 久島室長)「いつまでに」というより、途上国の関与のあり方をどうしていくかを将来枠組みの議論とともに行っていかなくてはならない。そうでない限り期限は分からない。もちろん結論は早く出るに越したことはないが。
(経済産業省 坂本室長)早さより中身に重点を置くべき。UNFCCCでは約190の国が集まる。また、米大統領選挙など、政治的なことも関わってくる。
(環境省 水野室長)日本単独でスケジュールを決めることはできない。ただ、今の段階で、期限のはっきりした意見提出をできるものもあるので、これらは求めに応じて日本としての意見を出していく。COP / MOP決定書には第一約束期間と第2約束期間の間にギャップのないことを目指して、と明記されている。
(林野庁 赤木管理官)吸収源についても、各国の出方を見ながら日本も調整していかなくてはならない。
   
Q8 目標達成計画に掲げる国内施策のうち、重点を置いている施策はなにか?
A8 (経済産業省 坂本室長)何がより重要でより重要でないかというのはない。一つ紹介したいのは京都メカニズムクレジット購入制度で、現在通常国会での法案成立を目指している。これは、1.6%にあたる1億トン(CO2)分のクレジットを今の石油特会の予算を利用して購入するもので、これにより日本のクレジット購入スキームは欧州各国にはいささか遅れをとったが本格的に動いていく。
(環境省 水野室長)一点追加したい。予算は通常単年度予算だが、本件は国庫債務負担行為として柔軟に対応する。なお、目標達成計画は京都議定書の6%目標だけでなく、低炭素経済を目指すスタートとなるものである。
   
Q9 APPは技術移転に役立つのか?
A9 (経済産業省 坂本室長)APPの目的は技術移転なので、技術移転がもたらされなければAPPの意義はない。UNFCCCでも技術移転は議論されているが、各国政府だけで話し合っておりあまり実効性はないように思われる。一方、APPは企業が参加しており、官民の強力なパートナーシップが一つの特徴でもある。この点は特に中国に影響が大きいのではないか。官が民に対して強力な主導権を発揮する中国からは国家開発改革委員会も参加している。技術移転については官と民のセットで議論していくべきであるので、APPは大きなポテンシャルを持っていると考えている。
(環境省 水野室長)APPでは具体的なトピックにおいて少数の主要国がきちんと議論できる枠組みとして評価している。
   
Q10 1990年以降8%排出量が増えてしまっていることに対して、モントリオールで日本は冷たい視線を浴びていると報道されていたが、事実か?
A10 (外務省 久島室長)「冷たい視線」でなく、これは途上国が今後もコミットメントを受け入れないための戦略だと思う。
   
Q11 温暖化問題の交渉にある南北対立という構図から脱却するにはどうすればよいか?
A11 (外務省 久島室長)難しい問題ではあるが、多様なチャネルを通じて対話を重ねていくことだと思う。
   
Q12 COP10の決定書に、CDMの方法論開発に関して3つの優先分野が挙げられていたが、進展はどうか?
A12 (経済産業省 坂本室長) 3つのうちの2つ(省エネ、交通)を開発しているFuture CDMなどの国際的なイニシアティブが、今回の決定書で推奨された。従って進展はあったと見ている。
   
Q13. プログラムCDMを認めるというCOP / MOP決定を日本政府はどう見ているか?
A13 (経済産業省 坂本室長)日本はこの決定を歓迎している。例えば省エネは(省エネの政府プログラムとしてCDM化のポテンシャルがあるが)追加性の証明が困難であった。今回の決定は、CDMのベースライン設定を有利にするために政策を遅らせる、というあるべきではないインセンティブを取り除く第一歩となる。
   
Q14 京都議定書目標達成のためのコストは算定しているか?
A14 (環境省 水野室長)コストは換算していない。それよりも、全ての人に幅広く参加、負担してもらうという視点を持っている。
   
Q15 APPに対して非参加国の反応はどうか?
A15 (外務省 久島室長)京都議定書を補完するものとして、反応は概ね良好である。
   
会場風景
(講 演) (質疑応答)
 
 
(注)本記録は事務局にて作成したものであり、発言者の確認を得たものではありません。

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