2006年5号

平成18年度 「エネルギー技術開発普及の促進に係る調査研究委員会」

 

【問題意識と調査研究の進め方】
 当調査研究委員会は、温暖化問題の長期的な国際枠組みのあり方の検討を大きな目的とする。
 国連気候変動枠組み条約第2条ではその究極目標を「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」としている。この達成には温室効果ガス排出量の長期で大幅な削減が必要である。そして、そのような削減を実現させるには技術革新は欠かせない。
 上記の究極目標の達成のために、技術の開発・普及・移転はどれだけ必要か、そのためには国際的にどのような取り組みが必要であろうか。当委員会ではエネルギー起源の二酸化炭素に焦点をあて、エネルギー関連技術を以下のとおり検討する。
①技術開発、普及、移転の必要性を把握するために、エネルギーシステムモデルの分析を参照し、モデルでは費用効果的な排出量削減がどのように達成されるか検証する。
②モデル分析の結果が示すような費用効果的な低炭素社会を実現するには、どのような政策をとるべきであろうか。現在の京都議定書のような、限られた先進国が短期間の数値目標を負う枠組みは低炭素社会の構築に効果的だろうか、そしてそれは長期的に低炭素エネルギーシステムを構築するインセンティブとなりうるだろうか、国内対策、国際協力・枠組みのあり方はいかにあるべきだろうか、これらの問題を検討する。
③長期的な温暖化対策の目標を考えるにあたって、どの程度の削減が技術的に可能であるか検証する。EUが主張する「工業化以前と比べ全球の平均気温の上昇を2℃以内とする」目標や「2050年での90年比で排出量50%削減」という数値は技術的な裏づけがどの程度あるのか議論するとともに、我が国の掲げるべき長期目標についても技術の面から検討する。

【調査研究委員会の開催】
 委員会を平成193月末までに45回開催し、検討を進める。これまで3回開催した。
○第1回 平成18728
議題:山口委員長発表「地球温暖化の『危険な人為的干渉(Dangerous Anthropogenic InterferenceDAI)』を巡る議論と当委員会での技術開発の検討のアプローチ、
藤井委員発表「世界エネルギーモデルを用いた地球温暖化の統合評価」
○第2回 平成18104
議題:秋元委員発表「アクションオリエンティッドな排出削減目標と内生的技術習熟モデルによる長期排出削減目標の評価」
○第3回 平成181020
議題:講師Nebojša Nakićenović教授(オーストリア国際応用システム分析研究所、ウィーン工科大学)「温暖化緩和における技術の役割(The Role of Technology in Mitigating Climate Change)」

【委員会メンバー(敬称略、五十音順)】 
委員長:
山口光恒(帝京大学・教授、東京大学・客員教授)
委員:
秋元圭吾(地球環境産業技術研究機構・主任研究員)
岡敏弘(福井県立大学大学院・教授)
木村宰(電力中央研究所・研究員)
工藤拓毅(日本エネルギー経済研究所・研究主幹)
瀬川浩司(東京大学・教授)
堤敦司(東京大学・助教授)
藤井康正(東京大学・助教授)
オブザーバー:
経済産業省

以上
(文責 地球環境部 信岡洋子)

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