2008年1号

平成19年度 「社会文化の変化と企業経営の進化に関する」研究委員会

1.本研究実施の背景
 昨今、多機能・低廉価格の過度な追求により、安全で顧客が喜ぶものを作る伝統的な「ものづくりの心」、「製品安全文化」の喪失が指摘される事例や、日本型の企業の社会的責任が疎かにされていると指摘される事例が後を絶たない。
 その原因として、過酷な国際競争や株主利益重視なども含めた短期的利益追求の傾向がコストダウンを優先し、日本企業のものづくりの信頼性(製品安全性など)や品格を重視する日本の伝統的文化に根ざす社会的責任感が軽んじられていることが考えられる。

2.本研究の狙い
 日本の伝統的ものづくりの心と信頼関係構築の文化の見直しが日本企業の持続的国際競争力の向上に寄与しないか。
 更には、企業活動における日本文化の体現により、日本企業の持つ文化(人材、ものづくり、マーケッティング)が世界と共有し得る価値を国内外に発信すれば、文化と産業の相乗効果が企業の持続的国際競争力向上に寄与し、国際社会の進歩に結びつかないだろうか。
 産業効率の追求は、技術と芸術、更には精神文明との乖離を引き起こしていると考えられる。初年度は日本のものづくりの伝統に着目し、現代のものづくりにおける安心・安全に対する顧客ニーズの変化と文化的側面としての価値観を追求し、企業の経済価値と社会の安定性・持続性の融合が国際競争力の向上に寄与することを明らかにしたい。
 更に次年度は、産業と文化の融合について考察を深め、情報通信技術の進歩はどこまで新しい次元の精神性と合理性及び効率性との融合を可能にするのか。産業と文化、技術と芸術の融合はどのような新しい価値を創造し、日本のブランド価値を再生し得るのかを追求したい。

3.研究の進め方
 委員長を中心に、文化・ものづくり、安心・安全、人材、マーケッティング・デザイン分野の専門家及び企業からの人材を研究委員に選抜して研究委員会を構成し、月1回2時間程度の事例研究、自由討議により平成19年10月より平成21年3月までの期間で上記目的に対する課題及び提言をまとめる。
 また、国際シンポジウムを開催し、研究成果を内外に問う。


研究委員会委員名簿
(敬称略、五十音順)
委員長 井出 亜夫 日本大学大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
委 員 後藤 和子 埼玉大学大学院経済科学研究科 教授
  杉浦 勉 丸紅経済研究所 顧問
  袖川 芳之 ㈱電通 消費者研究センター プランニングディレクター
  田中 一雄 ㈱GKデザイン機構 代表取締役社長
  西出 徹雄 (社)日本化学工業協会 専務理事
  宮村 鐵夫 中央大学理工学部経営システム工学科 教授
  W.パーペ 日欧産業協力センター 事務局長

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