2003年4号

平成14年度「企業の環境パフォーマンス評価」 研究委員会報告書

このたび、標記研究委員会報告書が完成したので、その概要を紹介する。



○報告書の概要(石谷委員長による報告より抜粋)

 本委員会の目的は、"企業の環境パフォーマンス評価"に関わる研究を行うことにある。 
 この課題は、環境マネージメントシステムに関わるISO14000シリーズの標準化の中でも企業にとって最も直接的影響が大きいため、各国の幅広い意見と対立により、結局テクニカルレポートで終わった、ある意味で最も困難な課題である。
 このような課題に、いま取り組まなければならないのは、近年環境マネージメントシステム標準化の影響で、企業の環境に関する意識、行動、或いはその管理体制が厳しく追及されるようになったからである。
 特に、北欧などの環境先進国において、グリーン調達等、企業の直接の環境行動がマーケットで評価される機運が高まってきたと認識されている。
 同時に製品の社会安全性、土地取得におけるサイトの安全性などの問題と関係して、投資、融資などの諸機関に置いても対象企業の安全性、社会的リスク、さらには環境パフォーマンスなどを確認する必要性が高まっている。

 本来、環境パフォーマンスの良い企業は、社会において正当に報われなければならない。また外部から評価される環境パフォーマンスとして、自社だけでなく、取引先の環境パフォーマンスまでが問われることになると、取引先相手の環境パフォーマンスに対する改善要求も必要になる。
 こういった傾向が進むと、客観的で、第3者が納得出来る、透明で、信頼出来る環境パフォーマンス評価を求める要請が起きるのは自然である。
 他方で、その考え方は千差万別であり、経済外の評価であるから価値観がはっきりしないため客観性を維持しにくい。このような情勢が環境パフォーマンス評価を求める動機として背景にあるといえる。

 現在、経済産業省は、産業構造審議会のもと「環境と産業に関する小委員会」を設立し、同様な課題、即ち環境配慮に関する企業努力が正当に反映されて報われるような形態、制度、或いは社会的啓蒙をどう進めるべきか、またその際に何が問題であるかといった障害と、その克服手段、手法を検討している。
 その中で、特に製品サイドでは環境ラベルなど環境情報を市場に公開して消費者へ伝えることなど、とかく問題となるB to C(産業界から一般消費者へ)の情報公開と伝達手段の重要性が論じられている。
 但し、消費者自身が市場においてこのような環境配慮製品を選択しなければ、結局は企業の努力は報われず、むしろ価格競争力を失うことになるので、それをサポートする政策、が必要である。

 LCA(ライフサイクルアセスメント)の中で、周囲へ排出する各種の廃棄物や資源消費を定量的に把握するインベントリー分析は進んでいるが、その結果である影響評価についてはいまだに議論が発散して、各種の意見が多様に現れている。
 こういった手法的にも定まらない、また定めてもいくらでも異論のでる可能性のあるパフォーマンス評価を、客観的、透明な手段で行うということ自体がきわめて矛盾をはらむ要求であるが、そこを何らかの妥協で現実の環境へのインパクトを反映し、しかも、客観性のある評価基準なり、評価項目を抽出することが必要である。

 このような問題をはらむ困難な課題に向かっているということを認識した上で、なお国際動向も眺めつつ、真に環境の改善に役立つような手法・手段を求めることが本委員会の目的であり、課題の性格から完全な解決は無理でも、効果的、且つ国際的にもイニシャティブのとれるような議論を展開出来れば、今後、我が国の発言力を増して、この方面の活動を一層強力に展開することが出来ることと思われるので、そういった成果を得られるよう努力していきたい。

○研究委員会メンバー (五十音順)
[委員長]
  石谷 久 慶應義塾大学 大学院 教授

[委 員]
  青木 修三 環境経営学会 理事
  國友 宏俊 経済産業省 産業技術環境局 環境調和産業推進室 室長
  古室 正充 株式会社 トーマツ環境品質研究所 社長
  中村 義人 朝日監査法人 環境マネジメント部 部長
  山口 光恒 慶應義塾大学 経済学部 教授
  横山 宏 株式会社 日立製作所 環境本部 主管技師長

[事務局]
  木村耕太郎 (財)地球産業文化研究所 専務理事 
  照井 義則        〃 理事・企画研究部長
  阿知波雅宏        〃 地球環境対策部 課長

○報告書構成
企業の環境パフォーマンス評価について (石谷委員長)
環境格付け、ランキングの課題-今なぜ格付け調査が必要なのか? (横山委員)
地球環境問題と企業経営-リスクとチャンス (山口委員)
新たな環境格付けへの挑戦 (青木委員)
環境格付けにおける評価と課題(中村委員)

▲先頭へ