1996年9号

IPCC第2作業部会 「技術報告-政策と措置」について

 世界気象機関と国連環境計画の共催で設立された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、これまで1990年に第1次評価報告書、1995年に第2次評価報告書などを発表している。第3次評価報告書は今後、内容の決定および作業部会・議長団の再編成などを行い、1998年から執筆を開始して2000年に完成することとなっている。

 一方、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に基づき組織された締約国会議(COP)の第1回会合において採択された、ベルリン・マンデート(2000年以降の目標を1997年開催のCOP第3回会合までに定める)の検討を行うアド・ホック・グループ(AGBM)も設置されている。

 これまでにIPCCが発表した報告書、特に第2次評価報告書は、UNFCCC第2条で示された安定化水準、正味の排出経路および対策技術と政策についての選択に関する科学技術的情報を提示しており、UNFCCCの交渉に寄与している。またIPCCの第1及び第2作業部会は、このAGBM及び条約補助機関から条約実施に直接関連する科学的調査の要請を受け、それぞれ3つの技術報告を作成することとなっている。

 現在、第2作業部会はそのうちの温暖化の緩和策、特にCO2の排出量 削減に関する政策と措置についてまとめる「技術報告-政策と措置(Technical Paper on Policies and Measures)を作成しており、本報告書のまとめ方について執筆者等が集まり、その方向性を議論する会議に出席した。日本からは、サブグループA(エネルギーと産業)の共同議長である通 商産業省の塚本弘参与、「エネルギーと変換産業」分野の執筆者の一人である東京大学の石谷久教授、サブグループAのTSU(テクニカル・サポート・ユニット)として本研究所から1名の計3名が出席した。

 会議の概要は以下のとおり。

  • 開催月日 1996年7月18日~19日
    開催場所 IPCC WGII事務局
         (米国・ワシントンDC)
  • 出席者 ワトソンWGII共同議長
        代表執筆者 計約15名
  • 主な内容
    ・主として先進国および途上国の政策決定・立案者向けの報告とする。
    ・IPCCの第1次及び第2次評価報告書を基に作成することとし、新しい知見はIPCCのレビュープロセスを経ておらず、不確定な要素があるので、原則として採用しない。ただし、その知見が極めて重要で取り上げるべきと考えられるものについては、その旨の注を付ける。
    Criteriaは、次の3つのカテゴリーに分類する。
     Environmental Results
     Economic and Social Effects
     Administrative, Institutional, and Political Issues
    ・2010年及び2020年に加え、2050年についても政策・措置を検討する。
    ・分野別分析では燃料税、R&D、マーケットプル・プログラムなどの特定の分野についての手段を、経済的手段ではとして複数の分野にまたがる炭素税、排出権、取り引き可能な排出割当てなどについて取り扱う。
    Executive Summary 2ページを含め、40ページ程度にまとめる。

 現在、1次案に対する政府・専門家のレビュー段階で、報告書の構成案と今後の作業予定は以下のとおりである。1次案では、エネルギー分野においてバイオマスに関する記述が多く、また今後議論の中心になると考えられる炭素税・排出権売買などについては、第3作業部会の第2次評価報告書の内容以上に突っ込んだ記述はない。

 

報告書の構成案(1996年8月末現在)
Executive Summary

I. Introduction
II. Assessment of Objectives/Measures
A. Sectral Analyses
1. Energy and Transformation Industries
2. Industrial Sector
3. Residential, Commercial and Institutional Sector
4. Transport Sector
5. Agricultural Sector
6. Forest Sector
7. Solid Water and Wastewater Disposal
B. Economic Instruments

今後の作業予定

8/ 1 ~ 9/ 3 政府及び専門家レビュー
~ 9/ 6 政府コメント集約
9/16 ~ 9/17 政府コメントを踏まえた代表執筆者会議
10/27 ~ 最終案完成
10/ 7 ~10/31 第2次政府レビュー
11/ 1 ~11/ 6 政府コメント集約
11/ 7 ~11/ 8 第11回IPCCビューロー会議
12/ 9 ~12/18 AGBM第5回会合 等

(湯川 求)

 

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