1998年2号

東邦ガスの環境問題への取り組み

1. 環境問題への取り組み体制・行動指針

 当社は、地球環境問題への対応を全社的に推進するため、90年に「地球環境問題対応推進会議」を設置し、93年には活動の推進役として部門毎に「環境行動推進者」を任命し体制強化を図ってきた。さらに97年には「地球環境問題対応推進会議」を「環境委員会」と改称した。

 また93年には「東邦ガス環境行動指針」を制定し、「東邦ガスは、地域および地球規模での環境保全の重要性を深く認識し、効率的かつクリーンなエネルギーの供給を柱として、環境調和型社会の実現に寄与します。」という環境基本理念を掲げている。この基本理念を実現するするために「行動指針」と「取り組むべき施策」を定めている。97年に行動指針を改訂し、あわせてCO2排出抑制に係るエネルギー利用効率の向上やNOxの排出抑制、廃棄物の排出抑制・リサイクルの推進等、主要項目について新たに具体的行動目標を設定した。たとえば、エネルギー効率の高いガス利用機器・システムの普及促進により、供給するエネルギー利用効率を90年度レベルより2000年度で8%、2010年度で15%向上させる目標であり、また都市ガス使用におけるNOx排出総量 を2010年度において90年度レベルに安定化する目標である。

 こうした指針や目標を達成するために、各部門が活動の自主点検を行い、その結果 を評価し、適宜改善目標を設定しながら管理レベルを高めていく「エコフォローシステム」を展開している。

2. 具体的取り組み

(1) 天然ガス普及・利用分野拡大と省エネルギー推進

 ガスコージェネレーションは、ガスタービンやガスエンジンなどにより発電するとともに、その排熱を冷暖房や給湯に利用するため、70~80%の高い総合エネルギー効率が得られ、従来の発電・熱利用システムに比べ大幅な省エネルギーを実現し、CO2排出抑制にも寄与する。当社管内においては自動車関連産業を中心に急速に普及している。

 地域冷暖房はボイラーや冷凍機などの熱源機器を1ヶ所に集中して設置し、ここで製造した冷温水や蒸気を広範囲のビルに供給することにより空調や給湯を行うシステムで、エネルギー効率の高い機器を集中制御することにより、省エネルギーやCO2、NOxの排出抑制を図ることができる。新幹線から見える名鉄ビル群は、現在地冷化工事を行っており98年12月に完成予定である。

(2) 天然ガス自動車の普及

 天然ガス自動車はNOxやCO、黒煙の排出が少ない低公害車として、本格的普及が期待されている。現在、世界では約100万台、日本では1,650台ほどが走っている。当社管内では96年度末で約200台で、本年度中に倍増を目指している。また天然ガス自動車普及に欠かせないインフラ整備も進めており、本年7月に全国で初めて主要設備を地下室に設置した丸の内エコ・ステーションを開設した。さらに、一般 家庭に供給されている都市ガスを昇圧し、簡単に燃料ガス充填を行える小型充填機の開発・導入にも取り組み、将来の広範な普及を目指している。

(3) オゾン層保護への取り組み

 吸収式ガス空調は、水の気化熱を利用して冷房を行うフロンを使わないノンフロン空調であり、オゾン層の保護に寄与するものとしてその普及に努めている。これまで既設の冷凍機からの切替で、当社が削減したオゾン層破壊物質である特定フロンの削減量 は、約60トンである。

(4) 廃棄物抑制とリサイクルへの取り組み

 天然ガス導入により、製造段階ではほとんど廃棄物を出していない。したがって当社における廃棄物は、ほとんどがガス導管工事時の道路掘削にともなう掘削土とアスファルト・コンクリート塊である。そこで掘削土やアスコン塊の減量 化のために、導管の新規埋設および古くなった導管の入れ替えを行う際に、道路の掘削を発進立坑と到達立坑だけにとどめる非掘削工法の適用拡大に努めている。また掘削土の減量 化のためには、ガス導管の現行基準より道路の浅い層への埋設(浅層埋設化)あるいは、より細い掘削幅での埋設(細幅化)が有効な手段となるので、今後の採用・導入に向けて行政および関係団体と現在検討を進めている。さらに発生した掘削土・アスコン塊も、再生処理して道路掘削時の埋め戻し土砂・路盤材として再利用している。現在のリサイクル率は、掘削土が37%、アスコン塊が93%である。

 また当社では、82年から耐震性に優れたポリエチレン管(PE管)を採用し、大口径導管にも適用拡大を図っているが、これに伴いPE管の廃材が増加してきた。そこで、PE管の廃材を、ガス管標示杭やガス管注意標識シートとして再利用するとともに本日配布したクリアファイル、ボールペンなどのリサイクル製品としても活用している。昨年度におけるPE管のリサイクル率は38%である。今後もさらに用途を拡大しリサイクル率向上を図っていく。

3. まとめ

 エネルギーと環境問題は切っても切れない関係であり、今後もエネルギー供給事業者としてLCA、ゼロエミッションの発想のもと、事業活動のあらゆる段階で環境問題に取り組んでいく所存である。

(本稿は1997年12月15日の第31回地球環境問題懇談会における東邦ガス株式会社 植手 洋行 環境部管理第一グループマネジャーの講演を事務局でまとめたものです。)

 

▲先頭へ