2002年2号

Delhi Sustainable Development Summit (DSDS) 参加報告

 2月8日-11日、インド・ニューデリーにおいて、今回が二回目となるインドのTATA Energy Research Institute (TERI) によるSustainable Development(以下SD)についてのサミットが開催された。以下に会合の概要と発表内容の簡単な報告をする。


 本年9月にヨハネスブルグで開催される国連持続可能な開発サミットの前の開催であることを強く意識したものであった。副題を「持続可能なくらし」とし、様々な側面から、様々な参加者により議論を行った。DSDSを通じてWSSDへ有益な知見を提供し、「Rio+10」に向けた政治的な推進力と熱意を再確認することが狙いである。
 開催国であるインドから多数、その他はヨーロッパ、アジア、北米、アフリカと幅広い参加があり、全体で400名程度であった。注目すべき参加者(発表者)は、COP6.5の議長を務め、WSSD事務総長特使でもあるJan P Pronkオランダ都市環境大臣、前UNFCCC Secretariat GeneralのZammit Cutajar氏、地球白書の著者であるEarth Policy InstituteのLester Brown氏などであろう。その他、各国の大臣や、政府代表、UNEP、WMO、UNU、WHO、World Bank、ADB、IIASA、Pew Center、IETAなど国際的に著名な機関から代表の参加があり、日本からは村田光平 前スイス大使が参加された。TERIの(もしくはDirectorであるPachauri氏の)ネットワークの広さが表れていた。
 以下、各セッションの内容から抜粋した。


1:Agenda 21―持続可能なくらしを確かにするもの

持続可能な生活は、資源の生産性拡大と資源や労働あるいは食糧の保障に関係している。
Agenda21(特に貧困低減と持続可能な生活に関するもの)を実施するにあたり重要な要素は、グローバリゼーションの傾向と、政治改革、資金供与である。
インドでは、環境や社会保障よりも、むしろ軍事に関心が寄せられていた。そして誤った資金供与によりSDが脅かされてきた。(ODAもうまく管理されていない。)
環境教育は能力育成や脆弱性の低減に貢献する。この点についても先進国は責任を認識するべきである。
Agenda 21を先導する制度メカニズムは、よりよい統治、公的参加、資金創設メカニズム、能力ある人間の移動の非制限などが必要である。


2:資金開発

貧困低減のための資金供与(ミクロ・マクロ政策)、国際的援助が必要である。
教育と識字能力は異なることを認識し、開発に関わる知識の「教育」を行うべきである。
貧困層への資金供与サービスは再構築されるべきである。
先進国における無駄な補助金の撤廃は、途上国への貿易の機会を与える。
開発資金供与には、1)国内・国際的私的資産 2)開発のためのグローバル化と国際貿易 3)開発援助、革新的資金源 4)債務管理 5)コンセンサスと首尾一貫性 が必要である。


3:持続可能な発展に向けた統治構造とプロセス

地域、国、地球レベルの制度的調整が必要である。
経済政策への環境政策の配慮・統合の欠如は、開発プロセスでの欠陥である。
リオの勧告の解釈の失敗は、北から南への資本移動であった。SDに関する資金面でのコミットが重要である。(例:援助による促進、公私の連携の強化)
革新的資金供与システム(CDMなど)は重要であり、民間部門の参加が強調されてきている。
リオ以降の議論では、制度改革だけでなく「よい統治」が重要であるとされている。
ヨハネスブルグサミットでは、主要な政策決定者に焦点をあて、意思決定のためのフォーラムを提供し、SDにむけた市民社会と政策計画者を理解することが必要である。


4:利害関係者の明確化と取り込み

ヨハネスブルグサミットは、政府と市民社会、ビジネスコミュニティの連携を定義することができるであろう。(←リオサミットでは、政府と市民社会との二極であったが、DSDSではビジネスコミュニティも重要と考える。)
また、ヨハネスブルグサミットでは、環境教育とそれを支える財政的メカニズムが重要であること、社会的価値の中心に位置するビジネス政策を明確化するべきである。


5:貧困のためのビジネスモデルの創造―持続可能な発展の拡充

投資者への利益も損なわずに、貧困者の収入が拡大するような長期的な戦略が必要である(周辺的アプローチでなく、SDを確実にするもの)。
社会的責任と持続性への管理に関する内容を、ビジネススクールでの教育に統合する。
ビジネスはNGOや政府との連携が必要である。


6:食料保障

 食糧保障と貧困問題は複雑に影響しあっている。持てるものと持たざるものの間の不公平が社会不安につながる。
 他の問題点としては、耕作地の減少、土地劣化、水不足と温暖化問題が挙げられる。
 「緑の革命」は生産性を向上し、備蓄と保存を改善し、食物の栄養を高めるものである。バイオテクノロジーの発達は持続可能な農業を促進し、環境を保護する。また、遺伝子工学も多くの利点がある。(これらのデメリット、危険性などについては特に言及なし。)


7:気候変化と持続可能なエネルギー


持続可能なエネルギーは、エネルギーのアクセス可能性、利用可能性、容認性を満足していなければならない。
数値目標、技術、柔軟性メカニズムの市場などの配分に関する公平性について特に重視すべきである。
途上国のFCCCへの参加は「するかしないか」の問題ではなく、「いつするか」という問題である。
持続可能性というのは公平性と効率性の和で得られる。
USの京都議定書不参加は、US自身の重要な市場の機会を失っている。
高い取引費用と政治的リスクは、効率的な公私のパートナーシップにより克服可能である。
SDを確実にするために、国内政策の枠組に気候政策を統合することが必要である。


8:技術のリープフロッギング

入手可能で、簡単に利用でき、そして、広くアクセスが可能な技術は、貧困を軽減することができる。
持続可能な技術(例えば、バイオテクノロジーや技術工学)は人類の生活に重大な影響を与える。
急進的な革新が人々のライフスタイルを変革し厚生を上げることの例として、IT部門の成長が挙げられる。通信だけでなく、衛星ベースのモニタリングなど途上国に有効である。
途上国のリープフロッギング(先進国の轍を踏まないため)には、適切な法制度、資金供与、国際協力が必要である。


9:環境大臣によるRio+10での挑戦

政府と私的部門、そしてNGOが共同で、発展に関する社会・経済・環境問題に取り組むべきである。
貿易と労働力移動の自由化、途上国への援助及び投資の拡大、そして、よりよい統治は、SDを促進するものである。
いずれの国もリオでの約束を守ってはいない。ヨハネスブルグではより具体的なアジェンダが必要となる(プロセス、国際・地域内・国内の関係、資金の流れなど)。


その他

 地域的な会合と予想していたが、参加者の質の高さ、参加人数ともに予想以上であった。特に、セッション10では、多くの大臣が集まり、意見を交換した。また、このセッションで大変興味深かったのは、プロンク氏の議長振りである。巧みに大臣から言葉を引き出し、結論を導いていた。他の議長とは全く異なるやり方であり、会場も大絶賛だった。
 インドデリーのChief MinisterであるMrs.Dikshitは、声高にインドの都市の貧困層の悲惨さを訴えた。大気汚染、ごみ・廃棄物問題、住宅供給の問題がまず取り組まれるべき課題であると述べた。デリーをLivable, breathableな町にすべきだ、というものである。事実、彼女が必死に訴えた内容は、本会合に出席しデリーに滞在した参加者には、実際に見聞し体験したひどさであったはずだが、驚くべきことに、質疑応答などでも全く議論されなかった。長期的な枠組、地球規模の取り組みが重要なことであるのはもっともだが、目前の問題について目をそむけているようで残念だった。

(田中加奈子)


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