2003年5号
			平成15年度研究テーマ紹介(1)
    
            
            
            
      
        
          
             本年度研究テーマの中から、 
                (1)持続可能な社会経済システムと企業の社会的責任 
              (2)貿易と環境の調和 
                (3)WTO加盟後の中国が 我が国に与える影響と我が国の対応 
 の3件について、その概要を本号で紹介する。
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          持続可能な社会経済システムと企業の社会的責任 
             
        
                
              
       
          1.背景 
   
   グローバル社会における企業の影響力の増大に伴い、企業に対して環境への配慮とともに、企業従業員の人権保護,消費者の健康と安全への配慮,或いは地域コミュニティへの貢献など社会的に責任ある行動(CSR)を求める声が高まっている。
        
        
   OECDの多国籍企業ガイドライン(1977)、アナン国連事務総長が呼び掛けたグローバルコンパクト(1999)、環境報告書・サステナビリティ報告書の提出を求めるGRIなど、企業の自発的な参画を促す試みがさまざまなスキームで進められ、欧米の多国籍企業や社会的志向を持つ多くの企業は、株主への経済的利益提供、環境への配慮と並ぶマネジメントの中核的要素としてCSRを位置付け、これらトリプルボトムラインの調和のとれた達成が持続的社会発展と企業存続に必須不可欠との共通認識が定着しつつある。 
        
   欧州においては、2002年10月に欧州委員会を議長に、欧州マルチステークホルダーフォーラムが設置され、経済界,労働団体,消費者団体,NGOなど企業と関わりのあるすべての社会的構成メンバーが参加し、さらに、欧州議会,ILO,OECD,UNEPなどもオブザーバー参加して、CSRの普及を通じての社会変革の課題に取組んでいる。 
        
   こうした企業のCSR認識の深まり、政府のCSR振興策に加え,企業の取組みを評価するSRI、議決権行使、ボイコット/バイコットキャンペーン、株主議決権行使、FTSE4GOODのような顕彰、SA8000のような認証格付けの試み等の新たな社会的な流れも生まれ、勢いを増している。 
        
   CSRの意義・重要性認識が欧米社会と産業界を中心に進む一方で、日本の社会では、一部の先進的企業を除けば、これまでCSRに対する反応は総じて低調であった。比較的希薄なCSR認識を携えて海外進出した日系企業が、現地事業活動の中で、NGOからCSR欠如を糾弾される事例もあった。 
        
   本年3月にとりまとめられた「第15回企業白書」(経済同友会,03年)では企業の社会的責任行動の重要性は徐々にビジネスリーダー層に浸透し始めており、日本社会でのCSR意識普及の課題は「WHY?」から、実践のための「HOW?」にシフトしているように見える。 
        
   多国籍企業を含め、日本国内で活動する企業は世界をリードしうる環境配慮の経営理念を掲げ、実践しており、トリプルボトムライン達成を目指すうえでのアドバンテージを持っており、今後、企業を含む社会システム全体として、CSRへの具体的取組みを積極的に展開することにより、グローバル社会に対して先進的なサステナブル社会モデルを提示することができると考えられる。 
        
   日本の社会と市場が、どのようなサステナブル社会モデルの構築を目指すのか、またそのために如何なる課題が存在し、その克服をどのように進めるのか、さらには、モデルに盛り込まれるメッセージをどのようにグローバルにアピールすべきなのか、これらを明らかにすべく、「持続的な社会経済システムと企業の社会的責任」研究委員会が設置された。 
        
  2.主要な検討点 
   
    (1)日本企業をとりまくCSR課題と克服へのアプローチ 
        
   日本社会でCSRの概念理解が進むなか、企業とそのステイクホルダーズとの間には如何なる課題があり、如何なる取組が進められているのか、具体的な取組みの事例を解析し、課題解決のために必要な企業側の創造的努力,市場や社会の側からの企業行動の評価や支援的な働きかけの在り方、更にはよりスムーズな課題解決を促す支援施策ほか環境整備といった政策課題を明らかにする。 
        
  (2)日本型CSRモデル 
        
   欧州社会、米国社会それぞれに、グローバル化と国や地域のアイデンティティー志向が併存し、それぞれの社会がグローバル普遍性と固有の尺度を具えた価値基準に基づいて企業にCSR対応を求めている。 
        
   進化・変革を目指す日本社会がこれから如何なる価値基準を導き、さらにその基準に照らして、企業に如何なる社会的責任行動を求めるのか、企業と社会との、さほど遠くない未来の関わりの在り方を探る。 
        
   特に、企業それぞれが固有の課題に対して、創造的にCSRに取組むことが求められ、そうしたオリジナリティの発揮を促す要素を組込んだいわば「日本型CSRモデル」とも称されるモデルを構築する。 
        
  (3)トリプルボトムラインの調和的達成 
        
   SRIの拡がりを始め、CSRに積極的な企業が社会的共感を得つつあるとはいえ、経済的な業績と環境配慮、さらにCSR実践のトリプルボトムライン(TBL)の達成はなお、企業にとって大変チャレンジングな課題である。 
        
   ISO14000シリーズ認証の日本国内の取得サイトが1万を超えたことに象徴されるように、国内企業の環境配慮は、世界をリードし、持続的社会構築に向けて、すでに大きなアドバンテージを持っているといえる。 
        
           こうした背景のなかで、これから構築される日本型CSRモデルは、企業の競争力を維持しつつ、調和的なTBL実現を果たすためにどのような経営戦略が必要とされるのか明らかにする。
                
      
                 
      
            
           
               | 委員長 | 
              谷本寛治 | 
              (一橋大学大学院商学研究科教授) | 
             
            
               | 委 員 | 
              逢見直人 | 
              (UIゼンセン同盟政策局長) | 
             
            
               | 同 | 
              金井司 | 
              (住友信託銀行運用部次長) | 
             
            
               | 同 | 
              金谷千慧子 | 
              (女性と仕事研究所代表理事) | 
             
            
               | 同 | 
              河口真理子 | 
              (大和総研経営コンサルティング部主任研究員) | 
             
            
               | 同 | 
              鈴木均 | 
              (NEC コーボレート・コミュニケーション部社会貢献部長) | 
             
            
               | 同 | 
              出見世信之 | 
              (明治大学商学部教授) | 
             
            
               | 同 | 
              古瀬裕昭 | 
              (富士ゼロックス調査部マネジメントサポートグループ長) | 
             
            
               | 同 | 
              星川安之 | 
              (財団法人共用品推進機構事務局長) | 
             
            
               | 同 | 
              緑川芳樹 | 
              (グリーンコンシューマーネット代表理事) | 
             
            
               | 同 | 
              森原秀樹 | 
              (反差別国際運動事務局長) | 
             
                  
               
       
                
      
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