■ まえがき ■ 2015年パリで行われたCOP21/CMP11において、2020年以降の新たな気候変動に係る国際枠組みを規定するパリ協定が採択された。パリ協定は京都議定書と異なり、全ての国が参加する画期的なものであり、市場メカニズムの活用やイノベーションの重要性も位置付けられた。そしてCOP27 までにパリ協定における具体的な実施細目等の多くが解決し、2050年でのカーボンニュートラル実現への向けた取り組みが加速している。さらに、COP29 ではパリ協定第6条の炭素市場における詳細なガイダンスや方法論決定による完全運用化が実現し、気候資金の新たな合同数値目標(NCQG)が設定されるなどの成果が得られた一方で、資金の規模や使途等において先進国と途上国との対立は解消には至らなかった。 当研究所では、従来から京都メカニズムの会計・税務問題について調査研究を進め、国内排出クレジットに関する会計・税務問題についても幅広い調査研究を実施してきた。今年度も、これまでに蓄積してきた知見をベースに、会計・税務の観点を踏まえて、引き続き気候変動に関する諸問題についての最新動向等について調査研究を行い、産業界さらにはわが国としての気候変動対策の推進に資することを本委員会の趣旨とする。 ■ 名 簿 ■
(五十音順・敬称略)
(令和7年3月現在)
(令和7年3月現在)
■ 第1章 開題 ■ 令和6年度排出クレジットに関する会計・税務論点等調査研究委員会 開題(抄) 委員長 黒川行治 地球温暖化を顧みないトランプ政権誕生下での2回の研究委員会 予想どおりトランプ政権は地球温暖化を顧みない政策を始め,温室効果ガス排出世界2位である米国のパリ協定からの離脱を図った。それのみならず,化石燃料の増産を薦め,自動車産業のガソリンエンジン車からEV車へのシフトも一時的にせよ停滞する可能性があるだけでなく,再生可能エネルギー生産全般の技術開発への負の影響が杞憂に終わることを願う事態で,2025年は推移している。 このような状況において,20年以上継続する排出クレジットに関する会計・税務論点等調査研究委員会は,令和6年度(2024年度)も例年どおり2回開催され,地球温暖化対策に関する世界情勢と日本の政策について,最先端の報告と議論が行われた。第1回研究委員会は2024年12月23日に開催され,4人の講師による4つのテーマでご講演をいただいた。それらを順不同で紹介することにしよう。高村ゆかり委員からは「COP29の結果と気候変動に関わる最近の動向」と題するご講演,三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高まりオブザーバーから「サステナブルファイナンスに係る国内外の動向~COP29を踏まえて~」と題するご講演,経済産業省の木村範尋METIオブザーバーから「COP29 について」と題して,COP29の開催現地であるアゼルバイジャン共和国・バクーの雰囲気や会議の進捗状況など諸々のお話,そして,武川丈士委員から「GT-ETSについて-制度上注目される点」のテーマで,当該政策の検討進捗状況を伺った。 第2回研究委員会は2025年2月20日に開催され,経済産業省GXグループ環境金融室企画調査官の小沼健一様から「我が国のグリーン・トランスフォーメーション政策」と題するご講演をいただき,委員およびオブザーバー各位によって当該政策に関する活発な意見交換がなされた。 本報告書に掲載される講演および報告資料は,第1回研究委員会および第2回研究委員会における報告内容である。ご講演をしていただいた講師諸氏,ならびに活発な議論に参加していただいた委員およびオブザーバーの皆様に,心より感謝申し上げます。 ■ 第2章 国内外の政策動向について ■
■ 第3章 気候変動に関わるファイナンスについて ■
■ 第4章 議事要旨 ■ 令和6年度委員会議事要旨 |